お京さんの茶事デビュー

  (今回は女房が書きたいというので・・・)


思えば飛んでもないことを考えたものです。

 

そりゃあ、裏千家・飯島宗章先生のお茶事の裏方・女中をさせて頂いて4年半になります。

自分の先生が年3回教えて下さるお茶事で、半東と亭主を1度づつ勤めさせて頂きました。

(入門からの年数の短い者に、こうした勉強をさせて下さる先生の有難さ!)

亡母がそれは熱心に茶事をしておりましたから、やや「門前の小僧」ではありました。

 

だからと言って「自分で茶事をしよう」あまつさえ「先生とお稽古の仲間にお客になって頂こう」だなんて。お茶の世界の常識からいえば“10年、いや20年早い”んです。


 しかし。私は茶事に魅せられたのが遅すぎた。母が唯々茶事がやりたくて、粉骨砕身の努力をしているのを、見ているだけの不肖の娘。それが不思議なものですねぇ、50代も終わりになる頃からその魅力・魔力に捕えられてしまったのです。茶事にはとにかく体力が要る。夫の造る見事な「懐石」なくしては、とても私の茶事は態を成さないのですが、ほぼ同年の夫の体力だって無限ではない。こんな楽しみが後何年楽しめるだろう、という思いは切実でした。

 

私の先生のお稽古場は、先生のお腕とお人柄の素晴らしさに加えて、先輩方がお優しい。悩んでいる私の背中を「やってごらんなさいよぉ」と、ポンッと押して下さった。1年あまりの逡巡が吹っ切れて、私は清水の舞台から飛んだのです! 2013年 4月6日のこと。

 

以下、夫の弟子“トラちゃん”こと車 匡史クン撮影の写真を添えて、のご報告。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


*寄付  「春風花自開」 の色紙

 

 さぁ、ここに出す莨盆の火入れ。これが私には大変でして。タイミング                  と
灰の筋が・・ 今回は熟練の先輩が半東を勤めて下さり、はぁ、という間に 出来ました。


 *露地草履はちゃんと並んでるかな? これは自分で出来ました。


 *蹲  前日から気合を入れて掃除。しかし「三露」の間合いの難しさ。

    皆さん、厳かに手と口を漱いで・・・


 *席入り  ・・・どうやら席も定まった様子。 いざ出番!

     

 するすると障子を開けて。正客を勤めて下さる先生の「どうぞお入りを」で
席に入る。心づもりした挨拶が、どこへ隠れたのか思うように口に上らない。

(参るなぁ)先生の見事なお正客ぶりに見とれて。(今は見とれてる場合じゃぁないだろうが) 

 今回は「前茶」なので濃茶を。 練るのは盟友・あきよちゃん。

彼女は私よりしっかりしていて、悠々と美味しい(はずの)濃茶を練って    くれる。


  ・・・  ここで中立ち。・・・・

 

* しばらくして。喚鐘を打つのだが、担当した者、なかなか狙った
   箇所に撞木(しゅもく・鐘をたたくもの)が
当たらない。
   これも打つ人をしっかり決めて、事前に実地の練習をしておかねば、   と
反省点。

 

* 炭点前の後、懐石が始ります。

�まず「折敷」と呼ばれるお膳に「四つ椀」と下の写真の「向付(むこう
 づけ)」に利休箸が添えられて供される。

京子先生茶事ー向附
「鰹に酒盗ダレ・花小松菜を添えて」

� 燗鍋(酒)が出ます

� 懐石の華・「煮物椀」

京子先生茶事ー椀物

 桜麩 海老真薯射込 こごみ 空豆 木の芽

� 焼物

京子先生茶事ー焼物

かます菜種焼 甘酢みょうが添

�進鉢

京子先生茶事ー進鉢

 

 新筍の土佐煮 車海老の旨煮 独活・わらび

� 強肴 1.

京子先生茶事ー強肴1


 まぐろのぬた

� 強肴 2.

京子先生茶事ー強肴2


 桜道明寺蒸し

これらが出るまでに、二度目のご飯や味噌汁のお替えが出たり、燗鍋(酒)
がもう一度など、いろいろの手順がございます。そして・・・

� 八寸  (料理人が「煮物椀」と並んで、目の楽しみに腕をふるう!)
京子先生茶事ー八寸

 蒸しあわび 蕗の薹

「八寸」が出ますと亭主と客が、これを肴に盃の献酬を楽しむ「千鳥の盃」
が始まり、懐石のクライマックスを迎えます。

そしてこの「盃ごと」が終わりますと、熱い湯に焼き米を放したものが
運ばれ、客は同時に供される「香の物」を相手に、飯椀をこの湯で濯ぐようにして頂きます。

最後に膳を下げた時には、最早洗う必要もないかな、と思うほどきれいに
ふき取られた器から、懐石の作法が、禅寺の雲水の暮らしぶりにその基を
持っていることが思い起こされます。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

トラちゃんの写真撮影は、「料理仕上がり」・・「運びますヨ!」という
半東さんの声に急かされての緊迫の中で行われます。 従って「あぁ、箸が
も一つ揃ってない!」とか、「撮影状況をもっと整えたかったのに」・・
とか、うらみ言があちこちから聞こえてきます。

しかし、茶事全体もそうですが、特に懐石の裏方の時間との戦い、手順を
研ぎ澄ましておかねばならない緊迫の雰囲気を、汲み取って頂けたら嬉しい
です。

こんなこと、もう二度と出来ないんじゃないかと思うほどの緊張と、後に
どっと出る疲れ。しかし、その波が引いていくと、「次は朝茶をやって
みたいわねぇ」なんて、同志ともいうべき仲間たちと、思いもかけない
会話を交わしている自分が居ます。

本当にお茶というものには深い魅力があるのです。







 






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