俳句と仮名遣い

 俳句のグループ、これを「結社」というのですが、一体
全体、日本にいくつ位あるとお思いでしょうか?

 私がはっきりした数を承知している訳もないのですが、
10年ほども前になりますか、相当物知りな仲間に「800
以上はあるだろうね」と聞かされて、びっくりしたことが
あります。

 それぞれの結社には、掲げる方針がありまして、俳句雑誌をパラパラとめくってご覧になると、「主宰」と呼ぶリーダーの言葉としてまず最初に述べられています。

 大別すると、いわば「古典派」とでも言いましょうか「花鳥諷詠」四季の味わいを重んじつつ、言葉の扱いは出来得る
限り“旧仮名遣い”で、という派と、いやいや、格別そうまで
クラシックでなくてもよいだろう、もう少し自由に行こうよ、という派。 もう少し進むと、「いやー、場合によっては季語に縛られなくてもいいのでは?」という「無季」までも包含
する太っ腹の結社もあるようです。

私が俳句に手を染めるきっかけを作って下さった「扉」の創刊主宰、土生重次先生は、かなりクラシックな方でして、「季語の働きを大切に、一読句意明快」「一句に“ひとふし”が無う
ては俳句としての味がないがな」(先生は、泉州堺の生まれ、生粋の関西言葉の方でした)という、実に明快なポリシーを
お持ちでした。

 
唯、下手の横突きで遊んでいるうちはいいのですが、振り返れば入門以来、20年を過ぎるかとなりますと、あんまりアホな間違い(句の良し悪しまで到達しない、文法上の誤りか・・)を放置しておいては拙かろう、という気分になって来ます。

 私は、早くから職人修業に入りましたが、女房は畑違いとは言え、私の言葉で言う「ガッコ(学校)の先生」でありますから、ますます都合が悪いのであります。ヤツは「やーだわ、私、国語は好きだし、本も大好き。普段は言葉のことで困ることはないんだけど、古文文法
ってほとんどやってないのよ。だって高校から音楽科に行っちゃったんだもン。大学の入試に古文はあったと思うけど、落ちるのが難しい位カンタンだった。その分、専門の試験に比重がかかる大学だったからね。」
「そんなの言い訳になるかよぉ。俺と違ってお前はアタマで飯喰ってるんだろうが」と、
ちょいといじめて楽しんでみても、コトの解決にはなりません。

 そこで二人で考えました。お互い、ちーと年は喰っちまったが、知らないことは習わにゃぁ
いつまで経ってもアホのままだ。ここは一番、誰か「ご指南さま」を探そうじゃないか、と。
そう相談が纏まると、世の中よくしたものでして、案外身近におれられるんですなぁ、頭の
いい人、ってのが。

これが、現在の我が家での俳句勉強会の「ご指南さま」だったという次第。
この方は、大変几帳面で、物事をきっちりと整理片づけて、元々が出来のいいオツムに畳み込んである、というご仁でして。その上、教え惜しみをしない、というのが私どもには有難い。

 それで当初は「二人でこっそり習おうよ、皆には恥ずかしいから」という気分だったのですが、「えぇ〜、倖さんチで、なんか始まるのぉ?」みたいにバレてゆき・・・ じゃ、いっそ
はっきりと仲間を誘って、皆で賢くなろうか!となった次第。

 で、お礼はどうする?となって。ご本人は「何をとんでもない、仲間じゃないか」とのたもうし、我らとして献呈出来るのは、おトッツァンの料理ぐらいしかないか、というので、
飲み会付の勉強会・というとんでもないものが出来上がってしまったのです。
それでも、材料費とビール代だけ集めるか、というので、我が家の会の会費は2000円。
談論風発。言いたいこと言って、友の俳句を肴に酒を飲む。これまた楽しからずや、なので
あります。  いえいえ、その段に入る前に、きっちり「お勉強」。
自分らの作った句に、ご指南さまの「文法のメス」が入ります。

「それ、俺の句!!えぇ、それ、文法的に間違ってるのぉ!」なんて悲鳴が飛び交うので
ありますが、ダーレも悲しんではいない。これが大切なポイント。

そうして暫くしますと、正式句会でわが仲間の句に文法的間違いが、圧倒的に減って来た。
そこここ、漏れはあるものの、旧仮名遣いにも、失敗が減りました。これは大変な「勉強会
効果」です。

 今、この時代に、何故に旧仮名遣い?という議論も勿論あります。
しかし、私は思うのです。私は学問をする時間はなかったが、物事のルールは解る。
「わっちらは、旧仮名遣いでいこう」と決めた土生先生の号令に応じて俳句を詠もうという
なら、何はともあれそこに軍旗を据えて、詠んでみようじゃないか、と。
その後で、いろいろな意見が出て、「もう、そんな時代じゃなくなった」となったら、それは
その時のこと。私もその時点で、どっちへ進むか考えます。

そういう、ちょいと偏屈な行き方も、面白いじゃないですか?







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