(文責・京子)
湯木美術館は大阪の名料亭「吉兆」の創業者・湯木貞一氏が収集した茶道具を中心とした名品のコレクションで知られています。
今月・2014年5月は大阪での仕事が多く、また嬉しいことに仕事と仕事の合間に自由な時間がある、という幸せな仕儀となりまして。思い立って「海を渡って来た茶道具」というタイトルの春の特別展を見て来ました。副題に「名物記・茶会記に現れた唐物・南蛮・高麗」とあるのにも惹かれたのです。
湯木美術館はスペースとしては小さいのですが、それ故に心静かに器たちとの会話を楽しめる、まことに贅沢な空間です。
私が訪れた、5/9金曜日の開館間もない時刻は、勿体ない位の静寂がすっぽりと場を包み込んでくれていました。
誰にも何にも煩わせられないで、好きなだけ時間をかけてお道具を見つめ尽くしていられるのは素晴らしい時間。
⁑東山御物(ごもつ) 古銅桔梗口獅子耳花入
これはガラスのこちらからでも「薄いなぁ・・」と嘆声を漏らしてしまう優美な姿をしていました。
耳である獅子も実に精巧です。
⁑「砧青磁管耳花入」 何という色合いだろう、と思います。姿も美しい。
⁑小堀遠州が持ち、近代の大茶人 益田鈍翁が愛でたという、伝来も華麗な「唐物朱四方盆」
⁑そして、建盞「禾目(のぎめ)天目」。南宋の時代といいますから、12〜13世紀に中国で焼かれた茶碗を21世紀の日本で
目にしている不思議さ。
面白かったのは「尉か髭」という銘がつけられた茶壺(蓮華王印)です。これはガラスケースの中でゆっくり・ゆっくり
回転しており、ある部分に大きな釉垂れがありまして、これが「尉(中国で謂う・おじいさん)の髭のようだ」というのです。
命名者は、表千家八代家元・啐啄斎。茶道具の「銘」というのは、私どもお茶を学ぶものにとってはとても楽しい世界なの
です。私はなくなった母と、よくいろんなものに二人だけで「ご銘」をつけて遊んでいましたっけ。
それにしてもこの「銘」には「フムフム、なるほどねぇ」と一人でにんまりしてしまいました。
この美術館には、とても優秀な学芸員がおられるらしく、一つ一つにつけられた解説がとてもいい。私のような「物知らず」
にも、興味を引き出してくれるように書かれているのです。さぁ、メモ・メモ! その時は書きまくって来たつもりでも、
時が過ぎればあっという間にそれらのことは天空に四散してしまう、情けないオツムの持主なのですが、でも、その時は
ほんとにドキドキ、わくわく楽しいのです。
後半の展示替えでは、唐物茶入「紹鷗茄子」が出るという。幸い、6/6〜6/29の間にもう一度大阪へ行く用事があるので、
これは見逃せない、と考えている。
私は「目利き」には全く程遠い者なのですが、唯、じっと美しいものを見ている時間が好きなんです。
こうして考えると、日本はいい国ですねぇ。こんなにたくさん、観るべきものがあり、一般の者がそれを見せて頂けるのです
から。